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米国鉱物金属材料学会(TMS)「AIME Champion H. Mathewson Award」を受賞

2023.07.25


米国カリフォルニア州サンディエゴにおいて開催された「第152回米国鉱物金属材料学会」(TMS)において、原子力基礎工学研究センター照射材料工学研究グループの平出哲也は上智大学とともに行った研究において、「AIME Champion H. Mathewson Award」を受賞しました。授賞対象となった論文は「"Hydrogen Desorption Spectra from Excess Vacancy-Type Defects Enhanced by Hydrogen in Tempered Martensitic Steel Showing Quasi-cleavage Fracture", Metallurgical and Materials Transactions A, November 2019 (open access due to the editor’s pick)」です。TMSはアメリカに本部をおく組織で、物質材料から工学、及び材料プロセスや、基礎研究ならびに先端応用研究まで、幅広く活動を行っています。

低温熱脱離分析法(L-TDS)と陽電子消滅法(PAS)を用いて、擬へき開破壊を示す焼戻しマルテンサイト鋼中の種々のトラップサイトの中から、水素存在下にて塑性ひずみにより導入された格子欠陥からの脱離による水素ピークを分離・同定する試みを行った。水素の存在下において塑性ひずみを付与した鋼試験片をL-TDSにより測定することで、2つのピーク、すなわち元から存在していた脱離と新たな脱離の分離を可能にした。PASの結果からL-TDSによって新たに見出された脱離は空孔型欠陥に対応することが明らかとなった。水素存在下における塑性ひずみは、破面から1.5mm以内に形成される格子欠陥濃度を原子比で約10-5オーダーまで著しく増大させた。これらの結果は、水素存在下における塑性変形がナノボイド核形成と合体をもたらし、焼戻しマルテンサイト鋼の擬へき開破壊をもたらすことを示している。

2023年度腐食防食学会学術功労賞を受賞

2023.07.10


原子力基礎工学研究センター研究推進室の加藤千明室長は、腐食防食分野における学術の進歩発展に貢献したことが認められ2023年度腐食防食学会学術功労賞を受賞しました。30年近くの長きにわたり軽水炉構造材料や再処理機器材料等の腐食挙動解明の研究開発を実施し、極めて困難な特殊環境を整理し学術的な視点から研究を遂行し、高度な専門性を発揮して多くの成果を上げることで実機あるいは実機材料の腐食対策立案に貢献しました。

第55回日本原子力学会賞論文賞を受賞

2023.03.28

原子力基礎工学研究センター核変換システム開発グループの岩元大樹研究副主幹、J-PARCセンター核変換ディビジョンの明午伸一郎研究主席、原子力基礎工学研究センター放射線挙動解析研究グループの佐藤大樹研究主幹、岩元洋介研究主幹は、日本原子力学会英文誌に掲載された論文「Measurement of 107-MeV proton-induced double-differential thick target neutron yields for Fe, Pb, and Bi using a fixed-field alternating gradient accelerator at Kyoto University, Vol.60, pp.435-449 (2023)」によって、令和5年3月14日に第55回日本原子力学会賞論文賞を受賞しました。

原子力発電所の使用済燃料は、数万年という長期間にわたって放射性毒性を持ちます。その毒性を低減するシステムとして、加速器駆動核変換システム(ADS)が注目されています。ADSは、高エネルギーの陽子ビームを標的に照射して出てくる中性子を利用して放射性毒性の強いネプツニウムやアメリシウムなどの物質を毒性の弱い物質に変換します。ADSの設計では高エネルギーの陽子と標的との核反応で出てくる中性子(核破砕中性子)の数およびそのエネルギー・空間分布を精度よく予測する必要があります。著者らは、京都大学のFFAG陽子加速器を用いて、ADSの設計で重要な鉄、鉛およびビスマスに陽子ビームを照射し、核破砕中性子の詳細なデータを取得しました。得られたデータをもとに、ADSの設計に用いられる核反応モデルの精度検証を行い、ADS設計の高度化に向けた知見を得ました。本成果および本研究で得られたデータは、ADSだけでなく加速器施設の設計にも貢献すると期待されます。なお、本成果は「原子力システム研究開発事業、研究課題名:FFAG陽子加速器を用いたADS用核データの実験的研究」の助成を受けたものです。

【受賞論文】
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00223131.2022.2115423

第55回日本原子力学会技術賞を受賞

2023.03.28

原子力基礎工学研究センター環境動態研究グループの中山浩成研究主幹、放射線挙動解析研究グループ佐藤大樹研究主幹、システム計算科学センター高度計算機技術開発室の小野寺直幸研究副主幹が、「局所域高分解能大気拡散・線量評価システム」に対し、令和5年3月14日に第55回日本原子力学会賞技術賞を受賞しました。

原子力機構は、これまでに緊急時環境線量情報予測システムSPEEDIを開発してきましたが、数10-100kmの領域を数100m程度の計算格子で地表面形状を解像して拡散計算を行うため、個々の建物影響を反映した大気拡散計算による複雑な放射性物質分布や建物遮蔽を考慮した詳細な線量評価は行えませんでした。

そこで、高分解能計算格子により個々の建物影響を考慮し複雑な気流を再現可能な乱流モデルを導入して開発した大気拡散計算コード(LOHDIM-LES)と、建物の遮蔽効果を考慮した3次元体系で放射線の挙動を計算する線量評価コード(SIBYL)を組み合わせた高分解能大気拡散・線量計算コードを開発しました。さらに、都市市街地内で放出されたトレーサガスの大気拡散を短時間で計算可能な都市大気拡散高速計算コード(CityLBM)を導入し、局所域大気拡散の様々な課題に対応可能な解析システム「LHADDAS」を完成させました。

「LHADDAS」は、原子力施設の安全審査における線量評価について、これまで用いられてきた風洞実験では困難な実際の気象条件を取り込んだより現実的な評価手法としての利用が期待されます。また、事前・事後詳細解析により、原子力事故時の施設内外作業員の被ばく線量評価、都市域での放射性物質拡散テロに対する汚染状況の把握と住民および対応要員の被ばく線量評価が可能です。さらに、即時解析による都市大気拡散テロ時での迅速な拡散計算結果の情報提供も可能です。

第55回日本原子力学会賞奨励賞を受賞

2023.03.28

原子力基礎工学研究センター放射線挙動解析研究グループの平田悠歩博士研究員が筆頭筆者として名古屋大学、九州大学およびBelgian Nuclear Research Centreと共同で日本原子力学会英文誌(JNST)に発表した論文「Theoretical and experimental estimation of the relative optically stimulated luminescence efficiency of an optical-fiber-based BaFBr:Eu detector for swift ions」(J. Nucl. Sci. Technol., 59, 915-924, 2022)が令和5年3月14日に第55回日本原子力学会賞奨励賞を受賞しました。

光刺激蛍光体BaFBr:Euを用いた小型線量計は放射線治療時の体内線量評価への利用が期待されています。しかし、粒子線に対するBaFBr:Euの発光効率は同じ線量でも光子線より低くなり、線量を過小評価することが問題となっていました。この発光効率の低下は粒子線が高密度にエネルギーを付与することで多くの二次電子を局所的に発生させるため、電子を光に変える発光中心が不足することが原因と考えられています。そこで本論文では、PHITSのミクロ線量計算機能を応用して粒子線によるエネルギー付与密度を計算し、BaFBr:Euの発光効率を予測する手法を開発しました。開発した予測手法は、他の蛍光体や様々な検出器に対して応用が可能であり、放射線計測分野全般への波及効果が期待できます。

【受賞論文】
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00223131.2021.2017372

JNST Most Popular Article Award を受賞

2023.03.28

原子力基礎工学研究センター核データ研究グループの中山梓介研究副主幹が筆頭筆者として九州大学および大阪大学と共同で日本原子力学会英文誌(JNST)に発表した論文「JENDL/DEU-2020: deuteron nuclear data library for design studies of accelerator-based neutron sources」(J. Nucl. Sci. Technol., 58, 805-821, 2021)が令和5年3月14日にThe Journal of Nuclear Science and Technology Most Popular Article Award 2022を受賞しました。

原子核物理や医療、核融合炉開発などの分野では、10MeV以上の高いエネルギーをもった中性子が大量に必要とされはじめています。しかし、原子炉などを用いた従来の中性子源では、こうした要求を満足させる中性子を供給することはできません。そこで、高エネルギー中性子源として、重陽子をリチウムなどに衝突させた際に起きる核反応を利用するものが注目されています。しかし、これまでこの反応から生じる中性子量を精度良く予測することは困難でした。本論文では、重陽子による核反応から生じる中性子量を精度良く予測する計算手法を開発しました。また、本手法の予測値を基に核反応データベースJENDL/DEU-2020を開発しました。JENDL/DEU-2020を用いることで、重陽子を用いた中性子源を、利用目的に応じた様々な仕様で設計することが可能になります。これにより、基礎科学・医療・材料開発など幅広い分野における中性子利用の促進が期待されます。なお、本成果の一部は「日本学術振興会科学研究費助成事業、研究課題名:低エネルギー重陽子核反応の高精度計算とそれに基づく小型中性子源の検討」の助成を受けたものです。

【受賞論文】
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00223131.2020.1870010

JNST Most Popular Article Award を受賞

2023.03.28

原子力基礎工学研究センター原子力化学研究グループの日下良二研究副主幹が筆頭筆者として東北大学および京都大学と共同で日本原子力学会英文誌(JNST)に発表した論文「Distribution of studtite and metastudtite generated on the surface of U3O8: application of Raman imaging technique to uranium compound」(J. Nucl. Sci. Technol., 58, 629-634, 2021)が令和5年3月14日にThe Journal of Nuclear Science and Technology Most Popular Article Award 2022を受賞しました。

核燃料デブリの組成は複雑と考えられ、適切に保管や処理・処分していくためには化学的状態を詳細に理解することが重要になると考えられます。これまでに核燃料デブリの主成分である二酸化ウラン(UO2)は水の放射線分解により生成した過酸化水素(H2O2)と化学反応して過酸化ウラニルという変質相を形成することが知られていました。本論文では、核燃料デブリの一部に含まれ得るU3O8からも過酸化ウラニルが生成することを示しました。さらに2種類の過酸化ウラニル(studtiteとmetastudite)の生成がU3O8表面で観測され、これらはお互い独立に生成することが示唆されることを見出しました。本成果および本研究で用いたラマン分光分析法は燃料デブリの化学的状態を今後より深く理解するための一助になると期待されます。なお、本成果は「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業、研究課題名:合金相を含む燃料デブリの安定性評価のための基盤研究」の助成を受けたものです。

【受賞論文】
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00223131.2020.1854881